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『教団X』を読んだ [読書]

・中村文則著。
・戦後間もなく生まれた宗教団体。そこにいた二人の男、松尾と佐渡は数奇な運命を辿り、そして現代、二人はそれぞれ別の宗教団体を設立していた。公安は佐渡の教団を"教団X"と呼び危険視していた。そして。。。

長い、長い、570ページ。しかもハードカバー。通勤時に持ち歩くのが大変。
・仏教観、死生観、宇宙観についてはなるほどなぁ、と感じる部分があった。
・作者の書きたかったことに合わせてストーリーが作られている感じ。知ったこと、言いたいことを教祖の言葉として、信者の体験として書いているけれども、参考文献を咀嚼しきれていない感じがする。

・新興宗教団体と現代日本で発生するテロ。こう書くとミステリーとか、アクションモノとか、刑事小説を想起するけど、ストーリーは前述の通りただの容れ物で、9割近くは登場人物の述懐に割かれている純文学路線。なのでストーリーや、辿り着く結末はチープなものだ。

・知人から『おもしろいらしいよ』と言われてなんの予備知識もなく読み始めてしまい、途中で『この本最後までこんな感じなのかな』と思ってレビューを数件見たら、なるほど最後までこんな感じらしいと知ったわけで、まぁもう100ページ位読んじゃったし、最後まで読もうか、となったわけです。

・エンタメ小説向きの設定なのに、そうなってないのです。

エロい。結構エロい。

・不思議と読みやすい。
・yogiさん『子育て侍』氏が好きだ。

・こんな作品をベストセラーにしてしまう(yogiさんの手に取らせてしまう)マーケティングが素晴らしいと思った。『アメトーーク!』で紹介されたそうですね。さすが人気番組は影響力が違いますなぁ。


教団X

教団X

  • 作者: 中村 文則
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/12/15
  • メディア: 単行本



教団X (集英社文芸単行本)

教団X (集英社文芸単行本)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2014/12/20
  • メディア: Kindle版



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『シークレット・レース ツール・ド・フランスの知られざる内幕』を読んだ [読書]

タイラー ハミルトン、ダニエル コイル著、児島修訳。
・かつてUSポスタルチームに所属し、伝説の男、ニール・アームストロングと共にツール・ド・フランスを始めとする自転車ロードレースで一時代を築いたタイラー・ハミルトン。しかし彼らの驚異のスピード、登坂能力はドーピングによるものだった。テストステロン、EPO(エリスロポエチン)、血液ドーピング。。。自転車レース界に蔓延していた(している?)ドーピングについて告白する。

ヘマトクリット値(血液中の血球濃度)を50%に"自然に見えるように"近付け、ロードレーサー向けの体格を作ることが勝利への道。検査に通るのであれば、なんでもする。勝利のために。
・作品後半になると、『もうEPOくらいはみんな打ってるから解禁しちゃってもいいんじゃない?』とか感じ始めている自分がいた。

"僕は薬を飲み、そしてそれは効いた。僕は速くなり、調子も格段によくなった。肉体だけではなく、気持ちも上向きになった。(P92)"

・タイラー・ハミルトン氏の告白を、ダニエル・コイル氏が聞き取り、各方面を再取材し、改めて一人称で書き直す。この手法がピッタリとハマッて、読みやすく、真実味と迫力がある作品に仕上がっている。劣化した血液を注入された時の狼狽の仕方とか。あと、翻訳が大変読みやすくて良かった。どれをとっても秀逸。

・自転車レースに命、名誉、人生、、、自分が持っているものを全て賭け、それでも手が届かない時に、諦めるのではなく、ドーピングを選んだ男達の話だ。勝利のために、必要なことはなんでもやるのだ。

・ランス・アームストロングがかなりの悪漢として描かれているんだけど、実際のところはどうだったんだろう。あと、彼がシェリル・クロウと付き合ってたなんて知らなんだよ。

・タイラー・ハミルトンとランス・アームストロング。ロードレース界の頂点にいた二人を中心にした、自転車レースに翻弄される人間を描いた、青春スポーツ小説のようだ。爽やかさもあり、裏切り、失意、逆転もある。

・現在のロードレース界は『パニアグア(Pan y Agua=パンと水だけ、つまりドーピングをしていないこと)』で、クリーンなんだろうか。ロードレースに限らず、他のさまざまなスポーツも。

・大変におすすめです。


シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)

シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)

  • 作者: タイラー ハミルトン
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2013/05/08
  • メディア: 文庫



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『インドクリスタル』を読んだ [読書]

・山梨県で高性能振動体となる人工水晶を製造している藤岡は、人工水晶の核となる種水晶の買い付けにインドに向かった。そこで出会った高品質な水晶を獲得すべく現地人と交渉してゆく。そこで出会ったロサというアウトカーストの少女に聡明さを感じた藤岡はなんとか彼女を救い出したいと考える。。。
・先端技術に使用される水晶を巡ってインドの小さな部族の村で繰り広げられる物語。モチーフが『工業用水晶』っていうだけでもう面白そう
・篠田節子の小説は(まだ2作しか読んでないけど)、結構ダイナミックに時間が経過する。半年とか、2年とか。
・インドって、ここまで暗黒大陸なのか。まぁインドに限らず海外でビジネスを進めようとするのは大変だなぁ。yogiさんも気を付けよう。

・『普通の日本人の感覚を持ったインド人』が出てこない。いい人そうな人も平気で怠け、裏切り、脅迫する。

・最終章がかなり駆け足な感じ。これは以前読んだ『ブラックボックス』もそんな感じだったので、おそらく作風なのでしょう。

・インド少女ロサ、彼女は本作のみで退場なのかなぁ。悪魔的な魅力を持つ天才少女。彼女が成り上がっていく中編とか、読んでみたいなぁ。


インドクリスタル

インドクリスタル

  • 作者: 篠田 節子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/20
  • メディア: 単行本



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『トリツカレ男』を読んだ [読書]

・いしいしんじ著。
・興味が湧いたら一直線、それしか頭になくなってしまう『トリツカレ男』のジュゼッペ。彼が興味を持ったのは三段跳び、サングラス、オペラ、昆虫採集、、、そして一人のかわいい少女、ペチカ。ある日動物園で風船を売っているペチカを一目見てトリツカレてしまったジュゼッペはあらゆる手段で彼女を幸せにしようとするのだが、ペチカにはどうしても取れない暗い影があった。。。
いしいしんじと言えば、先日蓮實重彦が三島由紀夫賞を受賞した際の記念会見で名前をあげられてとばっちりを受けた感のある人。

蓮實重彦さん、報道陣に「馬鹿な質問はやめていただけますか」 三島由紀夫賞を受賞(ハフィントン・ポスト)
http://www.huffingtonpost.jp/2016/05/16/hasumi-mishima_n_9998942.html
まったく喜んではおりません。はた迷惑な話だと思っております。80歳の人間にこのような賞を与えるという機会が起こってしまったことは、日本の文化にとって非常に嘆かわしいことだと思っております。

もっともっと若い方。私は、順当であれば、いしいしんじさんがお取りになられるべきだと思っておりましたが、今回の作品が必ずしも、それにふさわしいものではないということで。選考委員の方が、いわば「蓮實を選ぶ」という暴挙に出られたわけであり、その暴挙そのものは、非常に迷惑な話だと思っています。

・フォントサイズも行間も大きい、全160ページ。すぐ読み終わる。ハヤカワの翻訳モノだったら多分80ページくらいだ。
・過去のトリツカレ趣味がペチカを救うのにいろいろ役立つのが楽しかった。
・クレイとか、パペットアニメーションにすると楽しそうなお話でした。
・特にすることのない休日とか、だらっとしたい時に、オススメの一冊。


トリツカレ男 (新潮文庫)

トリツカレ男 (新潮文庫)

  • 作者: いしい しんじ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/03/28
  • メディア: 文庫



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『京都』を読んだ [読書]

・黒川創著。
・京都かロシアを絶対絡めてくる作家、黒川創の、その名も『京都』。京都市内の地域がタイトルになっている4編。
『深草稲荷御前町』『吉田泉殿町の蓮池』『吉祥院、久世橋付近』『旧柳原町ドンツキ前』

・さまざまな境遇の、いわばマイノリティが主人公となっている。在日韓国人、被差別部落出身者、暴力団員などなど。しかし彼らの境遇をことさら悲観して描くわけではなく、『たまたまそんな人たちが真ん中にいただけ』のお話となっている。
・どちらかと言うと各地域についての描写が深く、年に一度程度観光に行っているyogiさんとしては興味深かった。
・起伏のない、主人公とその周辺を精緻に描写し続ける作品だった。
・喫茶店、ペット火葬業者、鉄道会社のクレーム対応担当など、描写される職業も、妙に興味を惹かれる。

・黒川創の京都小説はいろいろあるのですが、『明るい夜』が好きです。海イコーヨ、ウミー。


京都

京都

  • 作者: 黒川 創
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: 単行本



京都

京都

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: Kindle版



明るい夜 (文春文庫)

明るい夜 (文春文庫)

  • 作者: 黒川 創
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/10/10
  • メディア: 文庫



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『果てなき渇望 - ボディビルに憑かれた人々』を読んだ [読書]

・ボディビルに魅せられてしまった人々のルポルタージュ。男性、女性、そして世界(アメリカ)のコンテストで戦うために禁止薬物に手を出してしまうステロイドビルダー。。。

・スポーツクラブに行っている人だったらわかると思うけど、明らかに『一見さんお断り』な雰囲気を醸し出している一角がある。それがバーベルエリア。不必要な筋肉量を身にまとった男女が呻き、血管を浮かび上がらせながらトレーニングをしている。そして時折鏡の前でポーズをとっている。そんな彼らの生態がなんとなく分かる本だ。

・ボディビル大会までのトレーニング、前日、当日の過ごし方が細かく描かれていて、とても興味深い。

・トレーニングというのは、yogiさんみたいな運動音痴なひょろひょろ人間でも、根気さえあれば必ず筋肉が反応してくれるので、ハマってしまうという気持ちはよくわかる。自分の考えた計画を元にトレーニングし、食事し、サプリメントを摂り、予想通り、あるいはそれ以上に筋肉が反応してくれたら、確かに気持ちいいだろうなぁとは思う。でもyogiさんトレーニングはしてるけど、プロテインも飲んでないし、仕事や他の用事が忙しかったら無理して通わないし、健康でさえあれば、そんなに筋肉もいらない。

禁止薬物を使用している人の言葉は、いくら言葉を重ねても言い訳にしか聞こえないし、自らもそれに気づいているように思えた。それでもステロイドを打ち、筋肉を増やしたい。業の深い世界だ。

・この本を読んだ後にたまたまボディビル大会をテレビで放送していたので見てみた。彼ら全員がそれぞれの事情を抱えながら笑顔でポージングしているんだろうなぁ、と感慨深かった。

・ボディビルをやっている人、興味がある人、ボディビルダーという生き方に興味がある人には必読の一冊でした。非常におもしろかった。


果てなき渇望―ボディビルに憑かれた人々 (草思社文庫)

果てなき渇望―ボディビルに憑かれた人々 (草思社文庫)

  • 作者: 増田 晶文
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2012/06
  • メディア: 文庫


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『デブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのか』を読んだ [読書]

・グレッグ・クライツァー著、竹迫仁子訳。

・異常な肥満大国となってしまったアメリカ合衆国。いつから、どうしてこのような『FAT LAND』となってしまったのか。そしてその解決方法は。。。

・yogiさんは米国の極端な食生活に関心がある。よくあんなおかしな食べ方をして平気だなぁ、と。まぁ平気ではないからこういう問題提起する本が出版されるんだろうけど、それを是認する社会というものが気になる。

・企業が安く仕入れることのできる商品を多く消費させようとマーケティングし、それが成功すると、結果的に国民は肥え太る。食べ物は消えるが、皮下脂肪、内臓脂肪は国民の腹に蓄積されてゆく

・学校は補助金を受ける代わりに校内にファストフード店を許可する。子供の頃からジャンクフードに囲まれ、テレビをつければスナック菓子と炭酸飲料のCM。こんな環境で育てば、なかなかジャンクフードから脱することはできない。
・危険な地域で暮らす子どもは外で遊べない → 屋内で遊ぶ → テレビの視聴時間が増える → 食品CMに触れる時間が増える → 運動不足とお菓子の食べ過ぎでまた肥える。。。

キリスト教の寛容の精神が、他者ではなく、自分に向かっているという考え方が面白かった。以前はもっと自分には厳しかったんだって。キリスト教って。

・国民に食べ物を少しでも多く売って儲ける企業がアメリカで優勢になっているから現在の『デブの帝国』が発生しているのだから、『食べさせない/痩せさせることが儲かる』社会が発現すればみんな痩せるんだろうなぁ。でもそれはちょっとした恐怖社会のよう。

・著者は既に現在肥満の大人に対しては諦めているように見える。その代わりにいかにして子どもの肥満を防ぐのかを考えている。

『少しくらいふっくらしている方が長生きする』というのも、アメリカ人に過食に対する罪悪感を弱めるための統計トリックなんだって!!騙されないで!!

・興味深い一冊でした。


デブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのか

デブの帝国―いかにしてアメリカは肥満大国となったのか

  • 作者: グレッグ・クライツァー
  • 出版社/メーカー: バジリコ
  • 発売日: 2003/06/25
  • メディア: 単行本



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『隠密味見方同心5 フグの毒鍋』を読んだ。 [読書]

・風野真知雄著。
・毎度おなじみ味見方同心シリーズも早や5作目。表題作含む4編。

『馬鹿弁当』
・魚之進宅の隣で作業をする大工から持ちかけられた相談。詰めたご飯に鰹節と醤油をかけただけの『馬鹿弁当』を毎日持ってきていた男がふっと来なくなったという。非番だったが魚之進は独自に捜査し。。。
シャケの弁当は、確かに冷めてもおいしいよなぁ。yogiさん妻にお弁当を作ってもらってるんだけど、シャケ弁だと嬉しいもんなぁ。

『フグの毒鍋』
・ヤクザの親分襲名の際、度胸試しに盲人がさばいたフグを食べる習慣があるのだという。そんな『フグの毒鍋』捜査を魚之進は命じられたのだが。。。

『イカタコ煮』
・腹を切られ、そこに互いの足を入れられるという男女の死体が発見された。この猟奇的な殺人事件が発生した時にちょうど輪番だった魚之進。事件現場で野次馬がふと漏らした言葉が『イカタコ煮みてぇだな』。イカにタコの足を詰めて輪切りにしたイカタコ煮。魚之進はイカタコ煮を売っている惣菜屋を訪ねる。。。

『なみだ酒』
・にゃんこの麻次に『同心たるもの女も知らなきゃいけません』と言われ、いよいよ決心して吉原に向かった魚之進。女性を決めていよいよ、という時にという時に『俺が百両で身請けしたんだ』と男が乗り込んできて。。。
頬に伝った涙を肴に酒を呑む、男にはそんな夜もある。
・果たして魚之進は『大人』になれるのか。。。

・北谷道海入道がよく出てくる。
・それに対して大江戸グルメライター、味見師の文吉さんが出てこなくて寂しい。準レギュラー格だと思っていたのだけど、本作には一切登場せず。

お江戸サイコサスペンス、『イカタコ煮』が面白かったです。
・兄波之進の暗殺の真相と『この世のものとは思えないごちそう』はシリーズを続ける限り真相にはたどり着かせない方針なのか。もうそこらへんは結構どうでも良くなっているんだがなぁ。特に波之進暗殺犯(の黒幕)はもう誰か判明しているんだし。
・魚之進の、波之進の未亡人お静への恋心はどう発展するのか。大丈夫か魚之進。

・5冊続いてまだマンネリ感がない、シリーズ作品としては大成功ですな。


隠密 味見方同心(五) フグの毒鍋 (講談社文庫)

隠密 味見方同心(五) フグの毒鍋 (講談社文庫)

  • 作者: 風野 真知雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: 文庫



隠密 味見方同心(五) フグの毒鍋 (講談社文庫)

隠密 味見方同心(五) フグの毒鍋 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: Kindle版



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『地を這う捜査』を読んだ [読書]

・雑誌『読楽』の警察小説アンソロジー。6人の作家の短編集。
・こういう傑作選的な本、お得感があって結構好きだ。
・ただし自炊した時にどのフォルダに入れればいいのか悩むのが玉に瑕。

安東能明「密室の戦犯」
・死後数日経った死体が鍵のかかった部屋で発見された。果たして死因は自殺か、それとも。
・『神村五郎』モノ、らしいのだけど、yogiさんそれ知らないからあまり楽しめなかったなぁ。高校教師から転職してきた変わり者だけど有能な刑事、らしいのだけど。

河合莞爾『また会おう』
・数年前に発生した連続殺人事件。直接の捜査から外された高山竜一だが、妻や部下のサポートもあって真実に近付いてゆく。。。
・ストーリー構成のトリックは結構始めの方でわかってしまうんだけど、まぁおもしろいからいいや。本筋はそこじゃないし。

佐藤青南『交通鑑識官』
・雨中で発生したオートバイの単独事故。しかし不自然な逆走、異常ともいえるスピード。雨は証拠を刻々と流してゆく。果たして事故か事件か。交通鑑識官杉浦が挑む。
・『警察24時』系テレビ番組でお馴染み、交通鑑識官が主人公だ。
・技術向上が著しい鑑識捜査の一端が垣間見られて、興味深い。

日明恩『山の中の犬』
・生活安全部生活経済環境中隊に所属する『私』は山の中でカメラを構え、容疑者をひたすら待ち続けている。そこに現れたのは一匹の犬。。。
・シリアスな警察小説がほとんどだけど、本作はユーモラスで微笑ましい作品。しかしそこでも犯罪は確かに発生しているのだ。
・『生活安全部生活経済環境中隊』、産業廃棄物の不法投棄などを取り締まる部署だそうで。
・著者、"たちもりめぐみ"と読む。読めるかぁ

葉真中顕『洞の奥』
・まっすぐで、常に正しい父に憧れ同じ警察官の道を選んだ熊倉清。しかし父、熊倉哲はある日行方不明になり、数日後崖下で遺体となって発見された。父に任されていた密命。果たしてこれは事件か事故か。。。
・父の無念を娘が晴らす、ようなストーリーかと思いきや。。。
・すごいサイコサスペンスだ。ゾクッとする。
・これは、ものすごく面白い。本当に面白い。yogiさん単純だから作者の期待通りにミスリードにミスリードを重ねてしまった。でもこの『やられたー』感がいいのです。
『ああそうか、信じている人に裏切られたときは、こうすればいいんだ。』

深町秋生『卑怯者の流儀』
・暴力団から便宜をはかってもらっていた不良刑事米沢は、その暴力団員である浦部から人探しを頼まれる。手付金の100万円を使い、米沢は犯人に近付いてゆくのだが。
・本書は彼が載っていたから読んでみたのです。
・暴力描写は抑えめ。あと短編だから描写が駆け足気味。


地を這う捜査: 「読楽」警察小説アンソロジー (徳間文庫)

地を這う捜査: 「読楽」警察小説アンソロジー (徳間文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2015/12/03
  • メディア: 文庫



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『やくざと芸能と』を読んだ [読書]

・なべおさみ著。
・日本の戦後芸能界を生きてきた著者の半生と日本芸能史を語る一冊。
・文字通りのやくざ、芸能人、政治家への選挙支援(ここは駆け足)など、ナベプロの、芸能界の影の部分を担っていた著者のどこまでホントかわからない赤裸々な告白。鈴木宗男氏の件はよく書いたなぁと思う。

唐突に日ユ同祖論が始まって面食らう。さっきまで勝新太郎氏の飲みっぷりはすごかったとか言ってたのに、いきなり放浪のユダヤ族は遂に日本に到達し、そこで栄えたのだみたいな話が始まる。
日ユ同祖論(wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E3%83%A6%E5%90%8C%E7%A5%96%E8%AB%96
・客観的な証拠はないが、そうだと信じている部分については『そうだと思います』と必ずつけているところに好感が持てました。論の正誤は別として。


やくざと芸能と 私の愛した日本人

やくざと芸能と 私の愛した日本人

  • 作者: なべおさみ
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 単行本



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『メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮』を読んだ [読書]

・巨大迷路を脱出したトーマスと仲間たち。彼らに告げられた現実は、地球は太陽フレアにより壊滅的な打撃を受け、『フレア』と呼ばれる伝染病が蔓延するようになっているということだった。安全な場所で休息をとっていたのも束の間、再び過酷なミッションを課されることとなった。今度は全員が『フレア』に感染させられ、治療薬を得るために灼熱の大地を規定時間内に駆け抜けること。裏切り、別れ、新たな仲間。果たしてトーマスらは無事ゴールに辿り着くことができるのか。。。

・人気シリーズ(らしい)の第二弾だ。日本でも昨年映画が公開された。

『メイズ・ランナー2 砂漠の迷宮』(Youtube)


・迷路は前作で脱出しているため、メイズ・ランナーというのは名ばかりで、ただただ砂漠や地下道を走り続ける。
・フライパンの活躍シーンが少なくて悲しい。名前も呼ばれなくなって、生死すら不明だ。
・トーマスたちはファーストミッション以前の記憶を失っている(グリーバーという猛獣に刺され、治療を受ける段階で記憶が戻るが再び薄らいでしまう)設定。そろそろこの記憶喪失設定が枷になってきて、『わからないけど、知っているという感覚』のような曖昧な表現で過去との繋がりを表現せざるを得なくなっている
・『記憶を失っているはずだけど直感を信じたら助かりましたー』というシーンが増えるため、どうしてもご都合主義に感じてしまう。
・更に生死に関わる怪我をしてもトーマスだけは助けてもらえる謎展開。思いっきり興が削がれる。

・でもまぁ、ティーンエイジャー向けの小説(映画)なので、こんなものなのでしょう。

・ノンストップアクション小説だ。映画だったら勢いで見せることもできるんだろうけど、小説だとどうしてもスピードは落ちる(速読できればいいんだけど)ので、粗が目立ってしまう。
・3部作で次巻完結予定なんだけど、3部作で『第一部完』くらいになりそう。まだまだ続きそう。或いは第三部が3冊組になる、とか。


メイズ・ランナー (2) 砂漠の迷宮 (角川文庫)

メイズ・ランナー (2) 砂漠の迷宮 (角川文庫)

  • 作者: ジェイムズ・ダシュナー
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/09/24
  • メディア: 文庫



メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮<メイズ・ランナー> (角川文庫)

メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮<メイズ・ランナー> (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2015/09/25
  • メディア: Kindle版



メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]

メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray



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『メイズランナー』を読んだ [読書]

・ジェイムズ・ダシュナー著、 田内志文訳。

トーマスは気付くとエレベーターに乗せられていた。自分の名前以外の記憶を消去され、運ばれた場所には、同様の境遇の少年たちが共同生活し、巨大迷路からの脱出を試みていた。凶悪な害獣、日々形を変える巨大迷路、エレベーターから運ばれてきた『最後の少女』テレサ。少年たちは果たして脱出できるのか、そしてこの迷路に少年たちを放り込んだ『創造主(クリエイターズ)』の目的は、、、

・全世界で大ヒットした(らしい)映画『メイズランナー』の原作だ。yogiさん原作も映画も知らなんだ。
予告編を観てから読むと、かなり理解の助けになる


・少年サバイバルアクション小説。『十五少年漂流記』をイメージしていただければよろしいのではないでしょうか。

・『理由はわからないけどこっちだと思うんだ』『うまく説明できないけどこうなるんだ』と、とにかく理由付けが薄弱
・『経験したことのないような』『みたことのないような』と、比喩表現もホンワカ
・上記フンワリホンワカ加減はなんとなく齋藤智裕の『KAGEROU』を思い出させる。もうちょっとしっかり描写せえ、と思う。

・記憶を消す必要はないんじゃないかなぁ。壮大な後付けの理由がありそうだけど、それは1巻では語られない。

・巨大迷路の謎が解けるシーンが有るんだけど、まったく理解できなかった。yogiさん文章を頭で映像化するのが苦手みたいだ。

・最近、軽めのファンタジー系小説は、会話部分をしっかり、描写部分は流して読んでもだいたいわかるということを発見した。

・今パート2を読んでいる。だいぶ読みやすく、面白くなってきています。1巻を読んで『今ひとつだけどこんなところで終わってて、ちょっと先が気になるなぁ』という方、迷わず2巻を読むことをおすすめします。いっそ2巻から読み始めてもいいんじゃないかという気までしてきた。


メイズ・ランナー (角川文庫)

メイズ・ランナー (角川文庫)

  • 作者: ジェイムズ・ダシュナー
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/04/25
  • メディア: 文庫



メイズ・ランナー<メイズ・ランナー> (角川文庫)

メイズ・ランナー<メイズ・ランナー> (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2015/04/25
  • メディア: Kindle版



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『屍者の帝国』を読んだ [読書]

・円城塔著。
・19世紀末、イギリス。フランケンシュタイン博士による死者の再生技術が世に広がり、産業革命と相俟って今や死者は貴重な労働資源として、また『死なない』兵士として様々な役割を果たしていた。医学生ジョン・ワトソンはヴァン・ヘルシング教授に紹介され、ユニバーサル商会の名義でアフガニスタンに派遣される。死者を集め、一大勢力を築いているという、カラマーゾフの調査のために。アフガニスタン、日本、アメリカと世界を回りジョン・ワトソンが発見したこととは、そして再生された最初の死者『ザ・ワン』とは。謎が謎を呼ぶ一大巨編。。。

・伊藤計劃が没前に約30ページほどの草稿を円城塔が引き継いだ作品だ。いろいろと掟破りだ。
・ロンドン塔の戦闘シーンが今ひとつイメージしきれなかった。多分映像化すれば面白いんだろうなぁ、とはおもったけど。
・ジョン・ワトソン、ヴァン・ヘルシング、スペクター、リットン、大村益次郎、明治帝、レット・バトラー、トマス・エジソン、フランケンシュタイン、、、創作と史実が入り乱れる世界で有名人が縦横無尽に駆けまわる。
・近代世界・日本史への興味をかき立てられる。

・『バーナード嬢曰く。』2巻ではこう言われているけれど、シャーロック・ホームズは最後の最後でちょっとだけ出てくる。

・最近『バーナード嬢曰く。』で紹介された本を読むことが多い。

・人間にはなぜ意識があるのか、という問いへの回答が興味深い。

・アクションアドベンチャーかと思ったら、最終的にはハードSFになっていた。



屍者の帝国 (河出文庫)

屍者の帝国 (河出文庫)

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/11/06
  • メディア: 文庫



屍者の帝国 河出文庫

屍者の帝国 河出文庫

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/11/06
  • メディア: Kindle版



アニメ化してるようだ。


屍者の帝国 [Blu-ray]

屍者の帝国 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: アニプレックス
  • メディア: Blu-ray



バーナード嬢曰く。: 2 (REXコミックス)

バーナード嬢曰く。: 2 (REXコミックス)

  • 出版社/メーカー: 一迅社
  • 発売日: 2015/07/27
  • メディア: Kindle版



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『隠密 味見方同心(四) 恐怖の流しそうめん』を読んだ [読書]

・風野真知雄著。

・大江戸グルメミステリー、味見方同心シリーズ第四弾。

『つるもどき』
・ご禁制の鶴の肉に模した『つるもどき』を精進料理に出していたという寺の住職が殺された。魚之進は犯人になんとなく辿り着いていたのだが、お寺での犯罪は寺社奉行の管轄。。。
・天海入道現る。
・本作の中で一番ミステリー感ある。

『へったれ漬け』
・町に辻斬りが出没するという報せに警戒する奉行所。鎖帷子を着込んで夜警にあたる。魚之進だったが、辻斬りを取り逃がしてしまう。逃がした場所は昼間べったら漬けならぬへったれ漬けを食べたところだった。。。
・魚之進、相変わらず剣術は苦手。

『ちくび飴』
・かわいい3人の町娘が飴を売っている。実はその飴は彼女らの乳首の形をしていると噂になって。。。
・江戸時代にもこういう微エロ商売、あったのだろうか。

『怪談そうめん』
・川に流れてくるそうめん。元を辿ると渋谷のお屋敷。お屋敷に閉じ込められている女性には悲しい過去が。。。
・本シリーズ、読みやすいからこの作品もサラサラーっと読み進めていたら、人間関係とストーリーがわからないまま読み終わってしまい、慌てて読みなおした

『第8回 日本タイトルだけ大賞』ノミネート作品。残念ながら受賞は逃しています。大賞は『やさしく象にふまれたい』
http://www.sinkan.jp/special/title_only_8th/nominate.html

・『大名やくざ』『わるじい秘剣帖』など、そもそも風野真知雄はタイトルだけ大賞の常連だった。

・脇役もそこそこ顔を見せ、父親の過去にも触れるなど、ますますシリーズとして安定してきている。

・今回も兄波之進の死の真相については進展せず。作者はこれを解決する気があるんだろうか。謎のままシリーズ最後まで引っ張るつもりなんだろうか。個人的には早めに解決してもらって、普通のグルメミステリーにして欲しいんだけど。でも謎を解いちゃうと味見方同心という役職自体がなくなりそうだしなぁ。難しいところなのでしょう。

・出版間隔、短いなぁ。2016年1月、もう次巻(フグの毒鍋)が出る。1年で5冊。すごいハイペース。でも面白いのでyogiさん的には嬉しい限り。


隠密 味見方同心(四) 恐怖の流しそうめん (講談社文庫)

隠密 味見方同心(四) 恐怖の流しそうめん (講談社文庫)

  • 作者: 風野 真知雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: 文庫



隠密 味見方同心(四) 恐怖の流しそうめん (講談社文庫)

隠密 味見方同心(四) 恐怖の流しそうめん (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: Kindle版



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『トリガー』を読んだ [読書]

・板倉俊之著。
・議会制民主主義が廃止され、国王制が敷かれた近未来の日本。一向に犯罪が減らない国を憂いた国王は、『いかなる犯罪も死刑になる恐れがある』という抑止力を期待し、選出された一般市民に拳銃を貸与し、彼らの判断で射殺を許可する法律を制定した。『トリガー』と呼ばれる射殺人への恐怖に怯えるもの、微罪で射殺された家族、トリガーに選出されたものの殺害を逡巡するもの、その力に溺れるもの。様々な人間模様を描く。

・お笑いコンビインパルスの板倉氏の作品だ。
・すぐ読める。ほんとすぐ読める。
・小説っぽさがない。ストーリーが描写されてはいるんだけど。比喩が少ないからかな。スピーディだからかな。描くポイント、省くポイントがテレビドラマ、舞台、マンガの筋書きのよう。
・一周回って振り出しよ、という作り方に板倉氏の作るコントに通じる部分を感じるし、最後の最後で一笑い誘うところがやっぱりお笑い芸人だなぁ、と思う。


トリガー

トリガー

  • 作者: 板倉 俊之 (インパルス)
  • 出版社/メーカー: リトル・モア
  • 発売日: 2009/06/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



トリガー(1)

トリガー(1)

  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2012/01/10
  • メディア: Kindle版



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