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『イカロスの森』を読んだ [読書]

・黒川創著。第127回芥川賞候補作。
・1年前にサハリンを訪れた際に出会った現地ドライバーから届いた一枚のファックス。その短い文章から思い出される、『死の黒い湖』を探したサハリンの旅。少年期の自分。シベリアに抑留されていた旅館の主人の話。そして現在。なんとなく生きている人間がなんとなく訪れた場所で出会った、なんでもない人々から語られる、なんでもない話。

タイトルでググると神戸の小劇場ばかり出てくる。そうなのか。

・『黒川創メーカー』が作れる気がしてきた。ちょっとヨワッとした主人公、現在、少過去、大過去。そして大過去にはソビエト(ロシア)を絡めて、時々京都を舞台にして、抑制の効いた文章にすると、黒川創の小説になる、気がしてきた。

・『いつか、この世界で起こっていたこと』につながる話が多くあった。サハリンの話とか、『将来の約束はしない』という女性とか。
『いつか、この世界で起こっていたこと』を読んだ(so-net blog yogi)
http://yogi.blog.so-net.ne.jp/2012-08-08

・『死の黒い湖』とは、「石油の湖だ。油がべったり浮いていて、日が照れば反射して白く光る。『死の黒い湖』っていうのはニヴヒたちの呼びかたで、おれたちは『鏡の湖』って呼んでいる。」(17ページ)
・『ルッキング・グラス』という表現、どこかで聞いたことがあるなぁ、なんだっけなぁ、と思ってたら、『あなたの人生の物語』だった。
そんなふうに、青年としての難問は中年に持ち越し、中年としての難問は老人になった自分に持ち越していくものだった。わたし自身の経験から言えば。そして、老人になってからの難問については、きっと確かな解答を持てないままに、わたし自身がここから消えてゆく。
だけれども、それは、意味のないことではない。わたしは、それを受け入れる。


・yogiさん通勤時間にいつも読書していて、この本もそうだったんだけど、毎日十数分ずつ読むんじゃなくて、何もない休日(できれば日曜日)の午後に一気に読んだ方が良いと思った。読後感が爽やかで、穏やかな気持ちになれる。

イカロスの森

イカロスの森

  • 作者: 黒川 創
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 単行本



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