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『京都人だけが知っている』を読んだ [読書]

入江敦彦著。

・観光地として名高い『京都』を内側から京都育ちの作者が京都を読み解く。
・『京都』はどこまでが『京都』なのかとか、『八つ橋』とお土産物事情とか、ポイントポイントは、面白いのですが。まあ書き方がいやらしい。

・『超映画批評』の前田有一氏みたいな文章、と言えばなんとなくお分かりいただけるでしょうか。あれはペラ1で済むからなんとかなるけど、あの文体、あのひけらかしで250ページ。
・まぁ、スノビズムの極みみたいな文章。
・『オレは、『自分は他人より頭がいい』と思っている人間が嫌いなだけなんです』と言い放った『相棒』の神戸尊くんみたいな人は多分数ページで本を窓から投げ捨てることになると思われます。yogiさんも投げ捨てようとしたのですが、新幹線の中だったので断念した次第です。
・妻は投げ捨ててた。
・でも全体の3分の2くらいまで読むと、もう気にならなくなってくる。きっと京都の人とのお付き合いも、そんな感じなのかもしれません。

・途中で投げ出した人のために、yogiさんがいいな、と思った文章を少々抜粋してみました。

京都人は喧嘩が嫌いだ。その相手がよそさんだとしたら勝てなくて当然だと考えているからだ。闘う前から諦めて「よそさんやし、しゃあない」と嘆息している。
これがvs京都人だとこんどは絶対に負けを認めないイヤラシさがある。論理的に追い込まれたら例によって「そう言わはるんやったら、そなんちゃう?」と曖昧な賛同で打ち切ってしまう。はっきり言うと、このセンテンスの翻訳は「馬鹿にゃ分かんねえよ」なのだが、言葉の表面上の慇懃さゆえに反論もできない。それ以上突っ込もうものなら、つまり感情的になったら最後「ああ、怖い、怖い」と茶化される。とにかく感情を出した方の負けが京都の法則。みんな負けたくないから、まずそこまで行かない。(9ページ)

『東山八百伊』が京風とわざわざ断って売るのはワイン漬けのらっきょうである。ここでは京風という言葉の意味が「薄いピンク色に染まって美しい」以上のなにものでもない。(105ページ)

「課長と奥さんが早く別れて私と一緒になってくれますように」。実際は、その課長の生命はもちろん年齢から会社名まで書いてあったのだが、それだけなら珍しくもない不倫成就の嘆願である。祇園に近く水商売関係の参詣客も多いだろう土地柄か、ここに掛けられる絵馬の二割近くが不倫絡みなのだ。問題は奉納者名の後の空スペースに、あきらかに異なる筆跡で記されていた文字である「そうはなるものか」(149ページ)

別に京都を名乗ったからとて減るもんじゃなし、それで観光客が誘致できるなら、どうぞどうぞだが、もうひとつ幻の京都になると話は別である。《あすなろ京都》がそれだ。
大阪人の京都嫌いについて先に述べたが、むしろ彼らのように反京意識の強い関西人というのは稀である。関西には京都人でもないのに京都人を名乗りたがり騙りたがる人々が結構いる。その代表が福井人と滋賀人である。とくに福井人は涙ぐましい努力をして京都的であろうとする。京都人にしてみれば近畿の天気予報図にどうして福井が入っているのか不思議なくらいなのだが。出身地をいつわる人間が跡を絶たない。むろん京都人には通用しない嘘なので、言葉の見分けがつかない関西圏外で吹きまくるわけだ。その心理はさまざまに分析できるけれど、それをしても仕方がない。ただ世の中には「明日は京都人になろう、明日は京都人になろう!」とするあすなろ京都人なる人種が数多くいるのは本当だ。そして、彼らが暮らす京都こそが《あすなろ京都》という幻影都市なのである。(220ページ)


京都観光のためというよりは、京都で暮らしたり、京都の人と付きあわなければならなくなった人に、オススメです。


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